俺様ドクターの溺愛包囲網


けれどそう思っているのは私だけのようで、院長はへらへらとどこか楽しそう。この院長をめぐって二人の女性が揉めたんだよな。なんだか納得なような、納得いかないような……。

さっき泣いているように見えたのも、私を近づけさせるための演技だったのだろうか?

「いくぞ宮永。こんなエロおやじ相手にする必要ない」

言いながら日比谷先生が強引に私の手を引く。その背中からは、ただならぬ殺気を感じた。

「宮永さん」

オロオロとしながら先生に連れられ病室を出ようとしたところで、院長に呼び止められた。

「は、はい」
「うちの息子をよろしくね」

そう言う院長の顔は、父親の顔をしていた気がした。

「い、痛いです、先生!」

無理やり私を引っ張るものだから、手首が悲鳴を上げている。握られた手からは先生の怒りが伝わる。ちょっと手が当たった程度なのに、そんなに怒らなくても。すれ違うナースや患者さんが、何事だと不思議そうに見ている。

「あの親父、許さん」
「で、でも、院長病気ですし、それにもう長くないわけですから……」

そう言えば、院長がピタリと足を止め、振り返った。

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