俺様ドクターの溺愛包囲網


突然のことに踏ん張れず、先生の背中に思いっきりぶつかった。

「いった、いきなり止まらないでくださいよ」
「長くない? 誰が」
「え? 誰がって院長ですよ」

キョトンとしながら先生を見上げれば、先生はあぁ、と思い出したように口を開いた。

「それはただの噂だ」
「え? 噂?」
「見ただろ、ピンピンしたあいつの姿を」

そう言われ確かにと頷いた。元気そうだったし、顔色も良かった。いったいどこが悪いのかと疑問を抱いたくらい。そういえば、先生からは一度も先が短いだなんて、聞かされていないような……。噂に惑わされていただけ?

「確かに入院した当初は悪性の腫瘍があるって言われて、余命宣告されたのは事実だ。でも昨日の検査で良性だってことがわかったんだ」
「そうだんたんですね、よかった~」

安どのあまり、廊下の真ん中でへなへなと座り込む。あんな院長だけど、まだ元気でいてほしいと思ったのは事実。

「じゃあ、跡継ぎ問題も、保留ってことですか?」

日比谷先生は今のまま、なにも変わらないってこと?

「そうなるな。来週には復帰する予定になってる」
「そうだったんですね」

あぁよかった。

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