俺様ドクターの溺愛包囲網
なんだか日比谷家に振り回された感はあるけど、結果オーライということで。
「そういえば、さっき言っていたのはお前の本心か?」
にやりと意地悪な微笑み浮かべる先生を見てハッとする。そうだ、私、院長が長くないと思って、本人の前でものすごく恥ずかしいことを言ったような……。
「心が温かい、尊敬している、か」
「もう、言わないでくさい!」
恥ずかしくて先生の口を塞ごうとするも、全くといって届かない。白衣のポケットに手を突っ込んだまま、余裕でかわされる。
「もっと聞いてやってもいいぞ」
「なっ、いいません!」
そんな言い合いをしていると、いつの間にか病棟を抜け、本館とつながるガラス張りになった通路に来ていた。
下には大きな道路が通っていて、車が勢いよく通りすぎている。ここは私が一日を始めるために深呼吸する場所だった。
朝はキラキラとした朝露が窓の外を舞っていて、それを見るのが好きだった。初めは先生が大嫌いで、よくここで気合を入れていたのを思い出す。
それなのに今は好きで好きで仕方なくなって、プライベートでも仕事でも、ずっと傍にいたいと思ってる。ずっとずっと遠い未来も、こうやって先生の隣を歩いていたい。
「ねぇ、先生?」
「なんだ」
「やっぱり聞いてください。私、先生が大好きです。ちょっと意地悪なところも、優しいところも、全部。ずっと傍にいさせてくださいね」
そういえば先生は優しく微笑んで、触れるだけのキスを落とした。
「嫌だっていっても、一生離してやらないからな」
「ふふ、はい」
俺様ドクターにとことん愛される覚悟は、もうとっくにできています。私達はまだ始まったばかり。
未来への階段を、一緒にのぼっていきましょう――