俺様ドクターの溺愛包囲網
何度かやめろと言ったが、全くやめる気配がない。こいつに何を言っても通じないのは、昔から。そのせいか、年は一つしか変わらないのに、喧嘩をしたことがほとんどない。
そんな俺ら二人の視線の先にいる宮永は、いまだ一人で手を合わせ、じっと墓石をみつめている。黒のワンピースに身を包み、長い髪を一つにまとめている姿は、不謹慎にも色っぽく感じる。
彼女を初めて見たのは、今から数年前のこと。医局秘書として中途で入ってきた宮永彩は、本当に成人した女なのかと疑いたくなるくらい、小さくて華奢だった。
それと同時に、どうせこいつも今まで辞めていった秘書と同じなのだろうと思っていた。医者と結婚を目的とした、あざとい女なのだろうと。
だが予想に反し、宮永は小さな体をいつも懸命に走らせ、テキパキと仕事をするやつだった。媚びを売るでもなく、ひたすら毎日業務にこなしていた。しかも昼はいつも持参の弁当を部屋のすみでつついていた。この病院には綺麗に整備された食堂というものがあるのに。病院の周りにも、飲食店は立ち並んでいる。
変わった女、それが宮永に最初に抱いた感情だった。