俺様ドクターの溺愛包囲網
「聡子も喜んでいるでしょうね、みんなに会えて」
墓石を見上げ、しみじみと言ったのは母だった。友達だったからとはいえ、男を取り合った相手、ましてやその男の子供まで宿した実の母を、憎んだこともあっただろう。
それなのに、残された俺を受け入れ、過剰なまでの愛情を注いだこの人の心情を、俺はいまだに理解できない。自分がそんな立場に立たされたら、そんなことができるだろうか。
「この後、食事でもどう?」
母が俺たちに視線を向け言った。先に反応したのは、要だった。
「ごめん、今日は無理。都築さんと食事にいく予定があるから」
「そう。わかったわ。颯士は?」
そう問われ、かぶりを振った。
「予定がある」
「じゃあまた今度会いましょう」
さっぱりとした物言いでそう言い残すと、母は持ってきた掃除道具を持ち、墓を後にした。
◇◇◇
「先生のお母さんに会えてよかったです」
車内で、宮永がホッとしたように口を開く。それと同時に、一つに結んでいた髪をゆっくりと解いた。その仕草に、つい目を奪われる。
「今度はお前の両親にも挨拶しないとな」
「そうですね。いつかお願いします」