俺様ドクターの溺愛包囲網
長い髪を耳にかけながら照れ臭そうに頷く。普段から強がりで真面目すぎる彼女。そういう一面に触れる度、守ってやりたいという気持ちが芽生え、気が付けば一人の女性として見るようになっていた。強がれなくなったら、甘やかしてやりたいとも。
「お義母さんのお誘い、断ってもよかったんですかね」
「気にしなくていい。あの人も忙しい人だし」
「少し寂しそうでしたけど……そういえば、予定があるって、何があるんですか?」
大きな瞳で、俺を下から覗き込む。そういえば、肝心な本人にまだ言っていなかった。
「あ、うちでのんびりしたいとか? それもいいですね。久しぶりに腕を振るいますよ」
いつもの笑顔で、腕をまくりながら言う。俺が頷けばきっと張り切って、色んなものを作ってくれるだろう。宮永の作る家庭料理は、初めから好きだった。懐かしくて優しい味がする。それに、テキパキとキッチンを動き回る姿にも、いつも心奪われた。
「いや、今日はちょっと寄りたいところがあるから付き合え」
「え? どこですか?」
「まだ内緒」
そう言って俺は、ぽかんとする宮永の視線に気が付かないふりをして、車を発進させた。