俺様ドクターの溺愛包囲網
◇◇◇
「えっと、これはどういう?」
全身コーディネートしてもらった宮永が、試着室からおそるおそる顔を出す。胸元が少し開いた白のフォーマルドレスが良く似合っている。
「可愛い。よく似合ってる」
「そういう意味で言ってるんじゃなくて。いきなり車から降ろされたと思ったら、こいつをドレスアップしてやってくれって。横暴すぎです」
相変わらずの強い口調で反論してくる。
「たまにはいいだろ」
「でも……」
いつも家族のためにあくせく働く宮永に、たまには自分を甘やかしてもいいのではないかと思いついた。そんな俺たちのやり取りを見ていた店員が「よくお似合いですよ」と褒めた。
宮永もまんざらでもなさそうで、鏡の前でくるりと回っている。やはり女性というのは着るもの一つで、気持ちが晴れやかになるのだろう。
「じゃあこれを一式。カードで」
「かしこまりました」
店員にカードを差し出せば、宮永が先生! と叫んだ。
「ダメですよ、こんな高価なもの」
「好きな女にプレゼントをしてなにが悪い」
「でも……」
遠慮深いのは今も健在のよう。だいたい宮永は飾らなすぎだ。その上、人に甘えるということを知らないらしい。