俺様ドクターの溺愛包囲網
ポケットにしまっていたあるものを一度ギュッと握りしめデッキに向かう。外は秋の風が吹いていて、レインボーブリッジが煌々と光を放っていた。
「気持ちいですね」
風に流される髪を押さえながら、宮永がしみじみと口にする。デッキには俺たちのほかに、数名のカップルがこの雰囲気を楽しんでいた。
「そういえば、真宙は大丈夫なのか?」
「あ、はい。今日は勉強合宿に行っているので」
「じゃあ今夜は誰にも邪魔されず一緒にいられそうだな」
「えっ……あ、そうですね」
ストレートに言えば、恥ずかしそうに俯く。その表情は何度見ても飽きない。気持ちを掻き立てられて仕方がない。
「ひゃっ」
だからつい公の場なのに、手が出てしまった。自分で自分が制御できなくなるなんて、これまでなかった。それもこれも、宮永だからだろう。
「んっ……」
肩を抱き覗き込むようにして唇を寄せれば、甘い声が漏れる。
「人……いますよ?」
「見ちゃいないよ。みんな自分たちしか見えていない」
誰も他のカップルに目を向けようとしていない。二人だけの世界に浸っている。