俺様ドクターの溺愛包囲網
俺自身も、誰が何をしようと全くといって興味がわかない。目の前にいる彼女にしか。
「先生がこんなに甘い人だなんて知りませんでした」
「こんな気持ちになるのは、お前だけだ」
言いながら再び、赤く色づく唇にキスをする。宮永も場の空気を読み取ったのか、そっと俺の腰に手をまわした。
そのぎこちない仕草には、毎回気持ちをくすぐられる。だからか、もっと雰囲気を味わいたいと思っていたのについ口が動いてしまった。
「なぁ、彩」
「は、はい」
驚いたように俺を見上げる。「彩」だなんてベッドの中でしか呼んだことがない。正直俺自身も照れ臭い。でも、今はそう呼びたい。
「結婚、しよう」
「えっ……?」
俺を見上げたまま固まっている。なぜこの日にと思われるかもしれない。だが、俺はずいぶん前から決めていた。この日にプロポーズをすることを。
「本気……ですか?」
「冗談で言うか」
そう言えば、大きな瞳が見る見るうちに潤みだした。
「……嬉しいです。私でいいんですか?」
「彩がいい」
そう言って彼女の頬に伝う涙を拭うと、ポケットにしまっていた指輪を取り出し差し出した。