俺様ドクターの溺愛包囲網


「私も、先生のこと大切にします。先生の支えになりたいです」
「手、出して」

そう言えばおずおずと手を差し出す。俺は彼女の細い指に用意していた指輪をはめた。彩は何度も深く頷いていた。

幸せに満ちた空気を思う存分堪能したあと、彩の家に車を走らせた。本当はホテルにでも行きたかったが、家の様子が気になるという理由で却下されてしまった。けれど、一緒にいられたらそれでいい。今日だけは呼び出されないことを祈りながら、家に上がる。

「うわぁ、真宙ったら、食べたものそのままだし、脱いだら脱ぎっぱなしじゃん。まったく」

リビングに入るやいなや、放置された服を拾い上げながら文句を零す。高校生男子を一人にしていたらこんなものだろう。

「あ、先生。お腹すきませんか?」

ふいにそう問われ、確かにと自分の腹を撫でる。料理はちまちまとしか出てこないし、全部量が少ない。だからああいった料理は好まない。それなら彩が作った家庭料理のほうが美味しいと、食事中も思っていた。

「お茶漬けでも作りましょうか? わが家直伝の出汁茶漬け、美味しいんですよ」
「じゃあ頼む」
「はい。ちょっと待っててくださいね」

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