俺様ドクターの溺愛包囲網
「嬉しくてついOKしちゃいましたけど、やっぱり無理ですよ、結婚」
「何言ってるんだ」
思わず声が荒ぶる。
「だって、私には真宙がいるんですよ?」
「だからなんだ。全部知ったうえでお前にプロポーズした」
「でも、先生には迷惑かけられない。家に帰ってきて、ふと我に返ったんです」
たどたどしく話す彩が何が言いたいのか、すぐにわかった。それと同時に、俺の覚悟が伝わっていなかったことも悔しかった。
「やっぱり真宙が卒業するまで、もう少し待って……」
そう話す彩を思いっきり抱き寄せた。
「なにいってんだよ。俺の話聞いてたか?」
「だって……」
「お前も、その背景にあるものすべてを守りたいって言っただろ。真宙もこの家のことも、全部だ」
「そんなことできません」
「義理がないって? 血なんて関係ないだろ。俺がそうしたいんだ」
ただ二人を守りたい。その一心だ。
「命のバトン。そう言ったのはお前じゃないか」
あー、なぜだ。今になって、義理の母の気持ちが分かった気がする。皮肉なものだ。
「でも、まだ手のかかる子供です。お金だってかかります」
「二人であいつが大人になるのを見届けよう。半分担わせてくれ」