俺様ドクターの溺愛包囲網

◇◇◇

それから月日は流れ――。

「真宙、お弁当持ったー? あ、颯士さん、早くいかないと遅刻しますよー!」

色んな事がとんとん拍子に進み、俺たちは晴れて夫婦になった。そして、この平屋の家で三人で暮らしている。

「弁当なんていらないっていったのに。俺もう大学生だよ?」
「なにいってんの。節約節約!」
「結婚したっていうのに、相変わらずだなぁ、姉ちゃんは」

真宙は苦笑いをこぼしながら、玄関でそれを受けとる。真宙は第一志望の大学に受かり、今まさに青春を謳歌中というやつだ。髪なんて染めてませやがって。

「颯士さんもはい、お弁当」
「あぁ、サンキュー」
「今日は定期健診なので、後で颯士さんの病院に行くと思います」
「じゃあ俺も一緒に付き添おうかな。着いたら教えて」

言いながら彩のふっくらしたお腹を撫でる。そう、来月俺たちの子供が生まれる。彩は先週から産休に入った。少しはのんびりしたらいいものを、家事や片付けなどで常に動き回っている。

「あ、動いた」
「颯士さんに触れられて、嬉しかったんでしょうね。名前、そろそろ決めなきゃですね」
「女の子の名前か。考えとく」

早くこの手で抱きたい。想像して思わず顔がにやける。

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