俺様ドクターの溺愛包囲網


昨日は受けなくてもいいなんて言っていたけれど、その声を聞いてやっぱり真宙も受けたかったんだと思った。諸々の支払いは遅れるけど、こっちを選んでよかった。

「じゃあこれ……」

そんなことを考えながらジャケットのポケットを探る。けれどすぐに違和感を覚えた。ここにしまったはずなのに、封筒がないのだ。

「姉ちゃん? どうかした?」

体中をぺたぺたと触りながら焦る私を、真宙が不思議そうに見ている。もしかして落とした? でもどこに?

「あ!」

ふとさっきの出来事を思い出し、大声が上がる。そんな私を真宙がビックリした顔で見ている。さっきあの男性とぶつかった時に落としたのかもしれない。深々とお辞儀をしたからもしかして……。ううん、それしか思い当たる節がない。

「真宙。あとお願いできる? 私ちょっと病院に戻る」
「え? 今から? どうしたの?」
「ちょっと野暮用を思い出した。戻ったらご飯作るから」

それだけ言い残すと私はバッグをひったくり、家を飛び出した。

まずい、まずい、まずい! 大事なお金を落とすなんて! もしかすると誰かに拾われているかもしれない。だとしたら……。


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