俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~

確か先生は昨夜当直だった。もしかしたら緊急のオペがあったのかもしれない。

先生たちは外来からオペ、それに学会など毎日忙しい。だから医局にいることは、すごく珍しいのだ。

「それと、医療機器メーカーのJ&Dの方が夕方、先生にお会いしたいと」
「あー、ちょっと今日は無理かな。なんか適当に理由付けて断っておいて」
「わかりました」

つい先日もそんなことを言っていた気がすると思いながら、先生の元を後にすると、医局の隅に位置する自分の席に着き、メールの確認作業を始めた。見れば、病棟のクラークさんから1通のメールが届いていた。

『お疲れ様です。日比谷先生に頼んでいた診断書、できていますでしょうか? 今日のお昼に退院される患者さんのものなのでその時にお渡ししたいのですが。まだでしたら催促よろしくお願いします』

読み終えた瞬間、思わず嘆息する。日比谷颯士先生は私がもっとも苦手とする先生だ。

この脳外科で一番の若手だが、一番態度がでかくて扱いづらい。院長の息子ということも理由の一つ。

とはいえ、腕はいいらしいし、極めつけにイケメンときたものだから、患者さんたちには、ちやほやされている。

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