俺様ドクターの溺愛包囲網


「あーもう! 私のばかー!」

つい数分前までほくほくした気持ちでこの道を通ったのに、今の私は半泣き状態で逆走していた。


◇◇◇

「どこ? どこ? どこいった私のお金」

病院の玄関口で四つん這いになり、植木やゴミ箱の中を無我夢中で探す。人気がないのが幸いだった。こんなところ誰かに見られたら即死もんだ。だがいくら探しても封筒は見つからない。

どうしよう……。あれがないと真宙にがっかりした顔をさせてしまう。来月の支払いもあるのに。

「はぁー……なんてドジなんだ。我ながら情けない」

盛大な溜息がこぼれる。目にはジワリと涙が浮かんでいた。こんなに探してもないんだ。きっと誰かに拾われたんだろう。諦めるしかないのかもしれない。

不甲斐ない姉でごめんね。心の中で真宙に謝って立ち上がろうとしたとき、ふと大きな人影が私を覆っていることに気が付いた。おそるおそる顔を上げると、不審そうな目で私を見下ろす日比谷先生がいたのだ。

「ひ、日比谷先生」
「何してる、こんなところで」
「えっ、と。あの……その」

日比谷先生は、いつからいたんだろう?


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