俺様ドクターの溺愛包囲網
あんな情けない格好を見られていたかと思うと、途端にかぁっと体が熱くなった。
「ちょっと、探し物を……」
「何を失くしたなんだ?」
「それは……」
お金を失くしたなんて言えない。バカにされるに決まっている。それに日比谷先生にとって五万くらい大した金額じゃないだろう。だから必死な私の気持ちなんてきっとわかるはずがない。
「日比谷先生には関係ないことですから。お構いなく」
「いいから教えろ」
どうして先生に言わないといけないだ。しかも相変わらずの俺様口調に、体がびくっとしてしまう。
「たいしたものじゃないので、大丈夫です」
思い切り嘘をついてしまったので、少し声が上ずってしまった。すると、そんな私の行く手を日比谷先生が遮ってきた。
「な、なんですか?」
「一緒に探してやるよ。何をなくしたんだ」
「えっ?」
予期せぬ言葉に耳を疑った。俺様な先生が、私の失くしたものを一緒に探してくれるなんて、いったいどんな風の吹きまわしだろう。弱みを握ってやろうと目論んでいるのか。疑いの目を向けていると、そんな私に日比谷先生が呆れたように言った。
「俺をよほど薄情なやつにしたいようだな」