俺様ドクターの溺愛包囲網


「い、いえ。そういうわけでは」
「手分けした方が効率的だろ」

言い切られ、咄嗟に俯く。俺様でいつもえらそうだが、その前に先生はドクターだということを忘れていた。人を助けるのが仕事。つまり弱っている人、困っている人に手を差し伸べることは、先生にとって当たり前のこと。髪を振り乱して這いつくばる同僚を、放っておくことができなかったのだろう。

そんな想像をしていると、先生は痺れを切らしたのか、私の返答も待たず、植木の中を覗きこんだり、生け垣の中を見たりし始めた。その姿に観念して「銀行の封筒です」と素直に口を開いた。

「すみません先生、ありがとうございます」
「日が暮れる。急ごう」

そう言って先生は白衣を翻し、一生懸命探してくれた。私じゃ絶対届かない高い場所を見てくれたり、重たい傘たてを退かしてみたり、懸命な姿に、つい目が潤みそうになった。忙しいはずなのに……。

いい人なんだか横暴なんだかよくわからない人だ。だいたい、私のこと嫌いだったんじゃないんですか?無言で探してくれている先生にいくつかの疑問を心の中でぶつけてから、私も再び探し始めた。



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