俺様ドクターの溺愛包囲網


二人で一時間くらい探したが、結局封筒は出てこなかった。視野を広げようという先生の言葉で、医局や院内の廊下、警備室に問い合わせてみたが、どこにもなかった。

「もう諦めます。先生まで巻き込んでしまってすみませんでした」

警備室からの帰り道、先生に深々と頭を下げる。真宙には正直に話そう。優しい真宙のことだから、きっとドジだなって笑って許してくれるだろう。

期待させてしまい申し訳ないけれど、他にどうすることもできない。サラ金に手を出すわけにはいかないし。

「銀行の封筒ってことは、お金が入っていたんじゃないのか」

先生がふと足を止め、振り返り言った。

「はい、そうです」
「いくらだ」
「五万です」

たかだがそんな金額であんなに必死になっていたのかと、思われたかもしれない。でも私と真宙にとっては死活問題なのだ。

「困るだろ?」
「……いえ、大丈夫です」

精いっぱいの強がりでそう言う。

「お前の『大丈夫』ほど信用できないものはないからな」
「え?」

それはどういう意味? と聞き返そうとしたところで、先生が私に何かを突き出してきた。見ると乱雑に握られた一万円札が数枚。

どういうこと?

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