俺様ドクターの溺愛包囲網


なんて無邪気な顔をするんだろう。もしかして、本当にごはん目当てで来たのだろうか? まさかと思うけど、家庭の味が恋しいとか。見たことのない嬉しそうな顔で食べる先生に、思わず胸が高鳴る。 

そんな自分に戸惑いながら、「おかわりありますよ」とだけ告げ、キッチンへと戻った。

「え! 日比谷先生、T大なんですか?」

台所で唐揚げを上げていると、真宙の驚く声が聞こえてきた。

「お前はどこの大学を目指してる」
「とりあえずいけるところを……」
「目標は明確にしておいたほうがいい。じゃないと後々困るのはお前だぞ」

もしかして進路相談してる? 菜箸片手に、耳だけ傾ける。

「先生はいつからT大に行こうと決めてたんですか?」
「小学生の時」
「えー! すげー! かっけー!」

興奮する真宙の声がここまで聞こえる。さっきまでいけ好かないみたいないい方していたのに、なにがどうなったらそんなテンションになるんだ。我が弟ながら単純だ。

「いいなぁ。俺も先生みたいに頭良かったら、姉ちゃんを楽させてあげられるのに」

真宙……。思いがけない真宙の優しい言葉に、胸がジーンと温かくなる。


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