俺様ドクターの溺愛包囲網
「お気持ちは嬉しいですけど、勉強をみてもらうなんてそんな厚かましいことできません。だいたい先生忙しいじゃないですか。いつも病院に寝泊まりしているの知っているんですよ!」
「だから、たまにって言ってるだろ」
「で、でも」
「あ、悪い。電話だ。はい、日比谷です」
興奮する私の傍らで日比谷先生が澄ました顔で電話をとる。ほら、こうやって勤務外でも電話がかかってくるんだ。勉強をみるなんて、物理的に無理だろう。
「悪い、緊急オペになった」
「大変ですね。わかりました」
やっぱり先生は忙しい。それに、どんなときも気が抜けないなんて、きっとすごく精神的にも体力的にも、大変に違いない。
「あの、よかったら唐揚げつめましょうか?」
気づいたらそう口にしていた。私のごはんが好みなら、それでパワーが出るなら。そんな想いが湧いたのだ。
「ちょっと、待っててください」
急いで揚げたての唐揚げをタッパーに詰め、玄関で待つ先生にそれを渡す。
「お待たせしました。これ、よかったらどうぞ」
「悪いな。じゃあ」
「あ、あの!」
今にも出て行こうとする先生の背中に、思わず声を掛けた。