俺様ドクターの溺愛包囲網
けれど私にはどうもあの不愛想で冷徹なところが受けつけない。しかも私のことをいつも腰掛けのくせにと言ってくる。事情も知らないで、よくそんなことが言えたものだと思う。愚痴ったところで、あの俺様ドクターに通じるわけないのだが。
「月曜の朝から憂鬱だ」
独り言のようにぼやいた後、日比谷先生のスケジュールを確認すると、今日は朝から外来の担当のようだった。そうなれば昼までここには帰ってこない。つまり、外来に行って先生に書類を書いてもらわないといけない。
「仕方ない。行きますか」
重たい体を奮い立たせ外来に向かうと、月曜日ということもありそこは人で溢れ返っていた。
日比谷院長が一代で築きあげたこの病院は、二千という有床数を持っている。経営者として、医師として有能な院長にオペをしてもらいたいと、全国から人が集まる。メディアに取り上げられることもしばしば。
二人いる息子も医師で、しかもいい男となればそうなるのも必然かもしれない。平凡で一社員にすぎない私には、雲の上のような話だが。
裏手にある処置室から脳外科の診察室を覗くと、日比谷先生はちょうど診察中だった。