俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
先生は不思議そうな顔で振り返る。
「い、いってらっしゃい」
「あぁ、行ってくる」
短く答えると、急いで駆けて行った。
「行っちゃった」
私が作った唐揚げを持って。あの誰もが恐れる日比谷先生が。ふとおかしくなって、思わずふふっと笑ってしまった。
どうして私のごはんにこれほどこだわるのかわからないが、先生は案外庶民派なのかもしれない。
タワマンに住んでいて、シェフが常駐していて、セレブな生活を送っているのだとばかり思っていたけれど、もしかしたら先生も普通の人なのかもしれない。
「姉ちゃん、なに一人で笑ってるの」
「ううん、なんでもない」
遠ざかって行く足音を聞きながら、かぶりを振る。
「日比谷先生っていい人だね」
「みたいだね。私も知らなかったよ」
「まじで勉強見てくれるのかな?」
「どうだろうね」
今までだったら「そんなわけないでしょ!」「信じちゃだめ!」と、一喝していただろう。でもこの僅かな時間で先生を見る目が変わってしまった。真宙との約束、案外守ってくれるかもしれない。
先生、オペ頑張ってください。