俺様ドクターの溺愛包囲網
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翌日、医局に入るとすぐ、ソファで大の字になる人を発見した。
近づいてみると、熟睡する日比谷先生だった。その側には昨日私が渡したタッパーが転がっていた。
しかも綺麗に中身がなくなっている。オペのあと食べてくれたのだろう。
それよりこんな薄着で、ブランケットもなにもかけていないのが気になる。このままだと風邪をひいてしまう。なにかかける物はないかと思い、辺りをキョロキョロと見渡していると、背後に人の気配がした。
「先生の寝顔、綺麗ですね」
出勤した早々甲高い声を上げるのは、同じ医局秘書の谷さんだった。私を盾にするように、背後からまじまじと先生の寝顔を覗き込んでいる。
「黙ってたら国宝級に良い男ですよね。宮永さんもそう思いません?」
「え? あぁ、まぁ」
彼女は私より年齢が一つ下で、先月中途で入ってきた、良くも悪くも今時の子。私と違って美意識が高く、いつも可愛いネイルをしているし、お洒落な洋服を着ている。グレーか紺の服しか持っていない私とは大違い。
すると谷さんが先生を見つめたまま思わぬことを口にした。
「私、先生と結婚したいなー」
「え! な、なにいきなり!」
「だって私仕事嫌いだし、一生遊んで暮らしたいもん」