俺様ドクターの溺愛包囲網

◇◇◇

先生に頼まれた本を探しに図書室に向かう。いつもこの難しそうなタイトルを探すのに苦労する。きっと学会用に必要なのだろう。

口は悪いし、秘書には手厳しいけど、仕事熱心な先生には頭が下がる。ずらりと並ぶ本を前に、紙切れ一枚を頼りに端から端まで見渡す。スペルも怪しい私には難題で、英語ばかりのタイトルに目がくらむ。

「あ、あった」

目的の物を見つけすぐさま手を伸ばすが、この低身長があだとなり、全然届きそうにない。

「えーと、脚立は」

独り言を零しながらキョロキョロしていると「宮永さん?」と、名前を呼ばれた。
見ると要先生だった。

「要先生、お疲れ様です」
「探し物?」
「はい。日比谷先生から頼まれものをしていて」
「届かないんじゃない? とってあげるよ。どれ?」
「すみません。あの一番右端の本です」

伝えると、要先生は背伸びもせず、あっさりそれを取ってくれた。

「ありがとうございます」
「いつでも頼ってよ。宮永さんはちびっ子なんだからさ」


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