俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
心配を口にしている間にも、先生はすでに口に頬張っていて、満足げな表情を浮かべている。そしてすぐに「ん、うまい」というお決まりの声が聞こえてホッとした。
「そういえば先生はどうして医者になろうと思ったんですか」
ほぼ鍋が空っぽになったところで、真宙が唐突に聞いた。先生は嫌な顔をせず、真宙に真剣な目を向けると、畳み掛けるように口を開いた。
「人の命を救いたい。単純にそう思ったからだ」
「うわー! ますますかっこいいですね」
先生の答えに興奮したのか、身を乗り出し目を輝かせている。真宙は日比谷先生を尊敬しているというより、恋でもしているかのように、うっとりした表情になっている。もはや恋する乙女だ。
「でも、医者になったことを後悔するときもある」
「後悔?」
「医者は神じゃない。助けられなかった命があるのも現実だ」
不意に見せる先生の寂しげな表情。前から思っていたけど、先生は少し影がある。なにか抱えているような。そんな影が。
思わず先生を見つめていると、傍に置いていたスマホが鳴った。見ると要先生からメッセージが届いていた。
『今度の日曜日の夜、あいてる?』