俺様ドクターの溺愛包囲網
少しここで待たせてもらおう。そう思っていると、背後から声をかけられた。
「彩?」
私の名前を呼びながら近づいてきたのは、脳外科外来の看護師、都筑美和だった。
「また日比谷Jrに用事?」
美和がニヤニヤと不敵な笑みを携え、近づいてくる。
「そう。また」
「秘書さんも大変ね」
美和は言いながら、こそっと診察室を覗いている。彼女とは職種は違うけれど、同期で唯一この病院で親しい人。ボブの髪に、背がすらっと高い彼女はいくら食べても太らないのだとか。
昔から小柄だと言われ続けてきた私には、美和の体型が羨ましい。150センチという身長がコンプレックスで、牛乳を飲んだり、健康器具にぶらさがったり、自分なりに努力したけれど、背丈は中学のときから伸びないまま。
そんな私が唯一自慢できるものといえば、この長いストレートの髪。特別な手入れなんてしていないけれど、初対面の人にも綺麗だと言われるほど。でも自慢の髪も仕事中はお団子のように一つにまとめているから、無意味なのだが。
「診察終わるの、もう少しかかりそうだけど大丈夫?」
「うん。ちょっとここで待たせて」