俺様ドクターの溺愛包囲網


そう思うと途端に恥ずかしくなる。

「今日の宮永さん、雰囲気違って可愛いね」
「え?」
「その服、良く似合っている」

心を読まれたのでは? という絶妙なタイミングで要先生が褒め言葉を口にする。

「あ、ありがとうございます」
「宮永さんって仕事のときもそうだけど、素直で真っ直ぐだよね。そういうところ、いいなって思う」
「えっ、と……あの」

こういう場合はなんて答えれば? 心の中であたふたする。けれどそんな小さなことで戸惑っているのは私だけのようで、要先生は何事もなかったかのように、メニューを眺めていた。

あー私、とことん慣れてない。こんなリップサービスを真に受けるなんて。とりあえず、今だけでも大人の女性を演じなければ。要先生に恥をかかせてしまう。そう思い直すと、背筋をぐっと伸ばし、自分に活を入れた。

運ばれてくる料理はどれもおいしそうで、自分では到底作れそうにないものばかりだった。旬の野菜を使った前菜から始まり、どこかホッとする優しい味のスープ。どれも自然と笑顔が溢れるおいしさ。だからか、つい本音がこぼれた。

「真宙にも食べさせてあげたいなぁ」
「え? 真宙って?」

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