俺様ドクターの溺愛包囲網
要先生の驚く声を聞いてハッとする。正面に視線を向ければ、キョトンとする要先生がいた。
しまった、つい……!
「もしかして、彼氏?」
「ち、違います! 弟です!」
慌てて否定すると、要先生がホッとしたように笑った。
「宮永さんは、いいお姉さんだね」
「……姉というか、母親代わりというか」
「母親代わり? どういうこと?」
「実は私、両親を亡くしていて。それで高校生の弟と二人暮らしなんです」
今頃私の作ったカレーを食べて、勉強をしているだろう。そんなことを想像していると、先生がクスクスと笑い始めた。
「もしかして自分ばかり贅沢して、弟に悪いなーなんて考えてる?」
「えっと、その……」
先生は心を読む天才? いや、きっと私が顔に出しすぎなのだろう。
「もし後ろめたいんだったら、僕から一つ提案していい?」
一人あたふたしていると、先生が意外なことを口にした。
「提案、ですか?」
「ここの料理をテイクアウトできるようにするから、それに免じて今は僕のことだけを考えてくれないかな?」
「……っ」
要先生の甘い言葉に、一瞬息が止まる。どうして要先生は私に良くしてくれるのだろう。