俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~


要先生のことを素敵だって言っている女性はたくさんいるのに。それなのになんの取り柄もない私を……。良く考えずOKしたけど、今更になって疑問符が浮かぶ。

「ダメかな?」
「そんな、全然ダメじゃないです! 弟もきっと喜びます」
「よかった。じゃあ後で注文しておくよ」

瞳を和らげ、先生は再びグラスを私に差し出す。もう一度乾杯しようということだろう。

「素敵な夜にしよう」

要先生の笑顔を前に、私は小さく頷いた。

食事とお酒を堪能し、お店をあとにする。外に出ると、お酒でほんのり熱くなった頬に初夏の風が掠め心地いい。日曜日ということもあり、街中はいまだ人気が多く、賑やかだ。

「先生、今日は色々とありがとうございました」

真宙へのお土産を手に、満足げに足を進める。

「こちらこそ。すごく楽しかったよ。こんな風に誰かと食事したのは久しぶりだったから」
「先生もお忙しいですもんね」
「颯士ほどじゃないよ。あいつは俺の倍は働いているからね」

急に日比谷先生の名前が出てきてドキッとする。同時に今出くわしたらどうしようという気持ちになった。なんとなく、見られたくないと思っている自分がいる。

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