俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
真後ろから聞こえてきた声に、我に返る。振り返れば日比谷先生が私のお弁当をまじまじとのぞき込んでいるとこだった。
「ちょ、いきなり現れないでくださいよ!」
しかも先生はどうしてこうも私のお弁当に興味を示すんだ。
「弁当に伊勢海老って、いったい何事だ」
「こ、これは……その」
なんて言い訳していいかわからず、口ごもる。昨夜、真宙にお土産として持って帰ったものの、食べ盛りとはいえ、さすがに夕飯のあとにフルコースは食べきれなかった。
けれど、もったいなくて捨てることもできず、考えた末、お弁当に詰めてきたというわけだ。でもまさか日比谷先生に見られるとは……。もっとこっそり食べるべきだった。
「し、知り合いにもらったんです」
頭をフル回転させた結果がこれ。知性がない言い訳に、思わず頭を抱えたくなる。
「ずいぶん羽振りのいい知り合いだな」
「もう、私のお弁当のことはいいですから。何かご用ですか?」
慌てて蓋を閉じ先生を見上げると、先生はシンプルな柄の封筒をスッと差し出してきた。
「これ、切手貼って出しておいて」
「あ、これってもしかして……。お返事書かれたんですね」