俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~


「もらったら返事を書くのが礼儀だろう」
「今日中に送っておきます」
「頼んだ」

ぶっきらぼうに言って、先生はデスクへと戻っていく。その姿に思わずクスッと笑ってしまった。
宛先に書かれていたのは少し前、脳外科に入院していた小学生の男の子の名前。その子は体育の授業中に頭を打ち、うちに運ばれ、血腫除去のオペをしていた。

最初は不愛想な日比谷先生に怯えていたものの、退院するころにはすっかり懐いて、最後は少し名残惜しそうにしていた。退院して少しして、あの子から手紙が届き、先生に渡したのはつい先日のこと。まさかちゃんと返事を書くなんてビックリ。でもそういう優しい一面があることを、きっとあの子は見抜いていたのだろう。

お昼を済ませると、来月のスケジュール調整に取り掛かった。背後にはいまだ日比谷先生がいる。今日はどうやらデスクワークデーらしい。外来やオペがない日にまとめて書類関係を片付けてしまうのは、先生の仕事スタイルと言ってもいい。

その反面、いつ休みをとっているのか心配にもなる。今だって先生の予定を組んでいるが、普段の仕事プラス、学会や講演会などもあって本当に忙しそうだ。

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