俺様ドクターの溺愛包囲網
ふと先生の予定を見ていて気がついたことがある。今度北海道であるアルファー社主催のシンポジウムの出欠の返事を、出していなかったのだ。しかも提出期限が今日まで。どうするつもりか尋ねるべく、先生の元へ向かう。
「日比谷先生、今度のシンポジウム、どうされますか?」
「あぁ、そういえばそうだった。北海道か……」
椅子をくるっと反転させ、悩ましげに顔を傾ける。シンポジウムというのは、専門家を複数招き、公開討論会を行う場のこと。先生はその一人に呼ばれているのだ。しかも今回は先生が一番専門としている、悪性腫瘍に対するゲノム医療の課題についてだ。
「出席するって返事出しておいて」
やっぱり、そう言うと思った。
「わかりました」
端的に答え、席に戻ろうと踵を返した。するとすぐ「宮永」と呼び止められた。
「はい、なにか」
「お前も一緒に行くか?」
「えっ?」
耳を疑うような発言に、思わず素の声が出る。
「それはむこうで、秘書業務をしろってことですか?」
先生の出張先にまでついて行くなんて話、聞いたことがない。もしかして、知らないうちにそういう制度ができたのだろうか?
「そんなわけないだろ」