俺様ドクターの溺愛包囲網

そう答えると美和は微笑みながら、自分の業務へ戻って行った。

それから少しして「お大事に」と、診察が終わる声が聞こえた。コソッと中を覗くと、日比谷先生が真剣な顔で電カルに目を向けているところだった。

みんなが言うように、顔はいい。でもあの、人を寄せ付けないオーラや、俺様な口調が苦手。先生目当てで外来に訪れる患者さんは本当に物好きだと思う。

「失礼します」

スッと息を吸い込み、意を決したように中に足を踏み入れる。

「日比谷先生」と声をかければ、先生はタイプする手を止め、私をじろっと見上げた。そのキレの長い目に、心臓がドクッとする。しかも背が高いから、座っているのにも関わらず、視線が私と変わらない。

「宮永か。どうした」
「あの、今日退院される患者さんの診断書の記入をお願いしたいのですが」

そう言えば「あっ」と思い出したように、一瞬だけ天井を仰いだ。オペに外来にと忙しいだろうが、提出物だけは期限内に欲しいのが秘書心。

「お昼には退院されるそうなので、できたら早めにお願いしたいのですが」
「今日は外来の予約が多いんだ。ちょっと難しいな」


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