俺様ドクターの溺愛包囲網
「え……じゃあどういうことですか?」
首をかしげながら尋ねれば、先生はなぜか焦れったそうに髪を掻きむしっていた。ますます意図がわからない。
「この、鈍感」
「えぇ!? ど、鈍感って?」
「気づけよ」
それだけ言うと、くるりと椅子を回し、再び仕事にとりかかった。その態度に、さらにわけがわからなくなる。どういうことだったのだろう。秘書嫌いの先生が私と北海道になんて……。
「宮永さん」
疑問符を浮かべながら席に着くと、柔らかい声が耳に届いた。振り向かずとも誰かわかってしまった。要先生だ。
「お疲れ様です。どうかされました? 日比谷先生ならあちらに」
「ううん、宮永さんの顔を見に来ただけ」
「あっ……そう、ですか」
露骨に返答に困ってしまった。でも昨日の今日だし、動揺しないほうが無理だ。しかも後ろには日比谷先生がいる。もしここで昨日のことを要先生が口にしたら、なんとなく気まずい。
「あの、先生。私今から総務課に郵便物をもって行かないといけなくて」
「あ、そうなの。ごめんね邪魔して」
「すみません」
申し訳ないが、ここは逃げよう。