俺様ドクターの溺愛包囲網
この人、あの時の。私がお金を落とした日に、病院を睨むようにして立っていたあの人では? 背丈も年齢もこのくらいだった。それに確か首元に特徴的なほくろがあったような。
チラッと振り返り見てみると、やっぱりあった。じゃああの時から、こうすることを計画していたってことだろうか?いったいどんな事情があって?
点と点がつながり、ますます怖くなる。息を呑む音が、静まり返る廊下に響いた。どうしよう。先生がこの人に刺されたりしたら。
なんとか止めなければ。そんな思考を巡らせていると、ふと前から人影が近づいてくるのが見えた。
視線を上げれば、そこには日比谷先生の姿が。
「宮永、何してる。その人は?」
私に気がついた先生が、不思議そうな目で私を見る。
「あの……すみません、私」
どうして言いなりになって連れてきてしまったんだろう。やっぱり、途中で大きな声でも出せばよかった。途端に後悔の念が押し寄せる。
「先生、お久しぶりです、覚えていませんか」
ぎゅっと唇を引き結んでいると、男性が私から離れ、先生に近づいていく。
「あなたは……」
「その節は、妻がお世話になりました」