俺様ドクターの溺愛包囲網
先生の元に駆けより、前に立ちふさがったのだ。
「先生、逃げてください」
「宮永、お前」
「早く」
先生を守らなきゃ。先生のオペを待っている人はたくさんいる。いろんな人の命がこの人にかかっている。山本さんのように悲しむ人を、これ以上だしちゃいけない。
「早く、先生」
両手を広げ、鋭い目つきで山本さんを威嚇していると、先生の呆れたような声が聞こえてきた。
「お前に何ができるっていうんだよ」
「そ、そんなの、やってみなきゃわかりません」
「女に守られる趣味はない。退いてろ」
先生は私を片手であっさりと背中に追いやった。それだけで、力の差を思い知るのには十分だった。
「なにコソコソと話してるんだよ、なめやがってーっ」
発狂したようにナイフを向け、突進してくる。もうお終いだ……先生が……!
ぎゅっと目を閉じ、先生の白衣を掴む。と、その時、先生が長い足を蹴りだしたのがわかった。
そのあと、カシャンという冷たい音が、辺りに響いてハッとした。
「宮永、警備に連絡を」
「え?」
次に目を開けた時には、先生が山本さんを床に抑え込んでいたのだ。この一瞬で、何があった?