俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
「でもそれじゃ、患者さんが後日わざわざ取りに来ないといけなくなります。それに病棟のクラークさんも困りますし……」
「そうは言っても、俺の体は一つしかない。物理的に無理がある。それに慌てて書けば、書き損じが生じる。不備があって後々困るのは患者さんだ」
ズバット言い切られ、言葉を見失う。
それは確かに一理ある。だが元はといえば、先生がすぐに書かないからこんなことになっているわけだ。それなのにどうして私が頭を下げなきゃいけないんだ……。
なんだか理不尽だ。
「戻ったら書くから、デスクに置いておいて」
人の気も知らず何食わぬ顔で言う日比谷先生に、思いっきり眉根を寄せる。これが精いっぱいの抵抗。
「……わかりました。病棟のクラークさんにはお昼すぎになると伝えておきます」
この人にこれ以上言っても無駄だ。それは経験上学んでいる。絶対に折れないし、いつも自分が正しいと思っているんだから。
「失礼しました」
早々に白旗をあげた私は、次に入ってきた患者さんと入れ替わるように診察室を後にした。やっぱりあの人と関わるとむかむかしてしまう。仕事は好きだけれど、あの人だけはどうも好きになれない。