俺様ドクターの溺愛包囲網


「離せー! このヤブ医者!」
「乱暴にしてしまってすみません、山本さん」
「くそっ……喜代子を返せー、うぅっ」

山本さんの悲痛な声に、胸が痛くなる。大切な人の死は残された人の人生を変えてしまうことがある。それは私も同じ。

山本さんの想いが少なからずわかるから、こうなる前に何か手はなかったのかと悔やまれる……。
だけどこうなってしまっては、もう誰にもわからない。


◇◇◇

それから少しして、山本さんは警察に連行されていった。その背中を先生と複雑な想いで眺めていた。

先生、きっと辛いだろう。私やスタッフには手厳しいけど、患者さんやその家族には優しかったし、いつだって誠意をもって対応していた。

それなのに、まさかこんな形で見送ることになるなんて……。

それにいつだったか、すべての患者さんを助けられないことを悔いているような発言をしていた。医者は神じゃないと。今冷静になって思い出したが、山本喜代子さんという名前に覚えがあった。


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