俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
家族に連絡をとるため、彼女のカルテを一度開いたのだが、山本さんは難しい悪性腫瘍をわずらっていて、うちの病院にくるまで、たくさんの病院に断られたと書いてあった。最後の砦としてここを訪れ、日比谷先生に出会った。
あとは憶測にすぎないが、先生だって山本さんがあまりよくない病状だとわかっていながら、受け入れた。きっとたくさん葛藤したに違いない。助けたいと、悩んだに違いない。それなのにこの結果は辛い……。
もしかすると、落ち込んでいるかもしれない。なにか励ましの言葉をかけなきゃ。そう思い、パトカーに乗り込む山本さんを見つめる先生に声をかけようとしたとき、先生のほうが先に口火を切った。
「宮永」
「は、はい」
「お前はバカか!」
真上から思いっきり怒鳴られ、体がすくむ。開口一番がバカって……!
もとはといえば、私がもっとしっかりしていたら、こんなことにはならなかったわけだけど……。
「なんで俺の前に立ちふさがるような危険なことをした。なんですぐに逃げなかったんだ」
「え? そこ……?」
「だいたいお前みたいな小さいやつに、どうにかできるはずないだろ。自分のことわかってんのか?」