俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
通院なんてことになったら、もっとお金がかかってしまう。
「頭の中で電卓弾くな」
「ど、どうしてそれを!」
「思考が駄々漏れだ」
……単純ってことですね。お恥ずかしい。
「金のことは気にしなくていい。こんなことになったのは、俺のせいなんだから」
「そんな、そこまでしてもらうわけには……」
慌てて首を振る。これ以上先生に借りは作れない。だいたいあの五万だって一円も返せていないのに。
「じゃあまた飯作って。俺はそれがあれば満足だ」
「でもそれじゃあ割に合わないですよ……」
「それでいいって言ってるんだ。お前は少しは人に甘えるってことをしろ。わかったな」
「え! あ、先生!」
先生はそれだけ言うと、外来を出て行ってしまった。
「行っちゃった……」
本当に勝手なんだから。先生の気配が消えると、そのままバタンと電池が切れたように倒れ込んだ。それにしても、とんでもない日だった。明日は、警察に聴取されるって話だし。そういえば私、なにか肝心なことを忘れているような。
「あっ」
先生に、要先生とのこと、誤解されたままだった。それを言いに戻るところだったんだ。明日会ったらきちんと話そう。言葉足らずで、ぶっきらぼうな先生との対話は、うまくいかないことのほうが多いけど、それでもいい。いつの間にか、先生のことで頭がいっぱいになっている自分に気がつく。
この気持ちがなんなのかよくわからないけれど、眉根を寄せる日比谷先生の顔を想像すると、自然と頬が緩んだ。