俺様ドクターの溺愛包囲網
詰め放題という言葉に弱く、主婦に紛れ必死に詰め込んできた。その数なんと三十個。あの時の達成感といったら、何とも言い難いものだった。周りにいたおばさまたちの視線を独り占めし「よっし!」とガッツポーズまで決めてきた。
「そういば、真宙は?」
先生がキッチンで準備する私に声をかける。
「それがまだなんです。いったいどこに行っちゃったのか」
時刻は十九時。いつもならすでに帰ってきている時間だ。最近行き詰まっていたようだったから、気分転換がてら、どこか別の場所で勉強しているのかもしれない。
「すぐ用意するので、くつろいでてください」
リビングにいる先生に声をかけると、エプロンを付け調理に取り掛かった。今日のごはんはコロッケだ。先生の口はどうやら庶民的らしいから、庶民の代表ともいえるこのコロッケも、きっと気に入ってくれるだろう。
そんなことを考えながら作っていたら、大判型のコロッケが大量にできてしまった。
「すごい量。作りすぎちゃった」
明日お弁当に詰めればいいか。冷凍もできるし。