俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
「なっ、なんでしょう?」
「狼狽えすぎだ」
「あの、離してください」
「なら必死で逃げろ」
無茶苦茶な発言をしたと思ったら、今度は先生の綺麗な顔が近づいてきて、思わず目を剥いた。
嘘……何?
困惑している間にも顎をすくい上げられる。先生の顔が角度を変えて迫ってきて、息が止まる。これは、どういうこと? わかんない。わかんないけど……覚悟を決めるように、ぎゅっと目をつぶる。
「ただいまー」
そこに玄関から真宙の声が飛んできて、我に返った。
「ま、真宙だ!」
ムッとした顔をする先生を押しのけると、私は玄関に向かって一目散に走った。
「おかえりー。遅かったね」
必死に冷静を装い、真宙を出迎える。
「友達の家で勉強してて。また戻るから、着替え取り来たんだ」
「え? 泊まるの?」
「うん。いい?」
「別にいいけど……」
ということは、今夜は先生と二人? ついさっきのことが頭を過り再びボッと体が熱くなる。
「あれ、先生来てるの?」
玄関に並べてある靴を見て、真宙がおもむろに言う。
「あ、う、うん」
「なんだ、そうなんだ」
「だからさ、今日は家にいたら? 勉強みてもらいなよ。ね?」