俺様ドクターの溺愛包囲網


◇◇◇

山盛りになったコロッケを前に、二人でそれを黙々と食す。けれど、頭はさっきのことでいっぱいで、喉を通らない。

そんな私とは裏腹に、先生はいたって平常運転。いったいさっきのはなんだったんだろう。気の迷い? からかっただけ?

「……ス」

静まり返った部屋で、先生がぼそっと呟いた。

「え?」

今なんと? スって聞こえたけど……もしかしてキスって言いました? まさかさっきの続きを要望してる?

「なに百面相してるんだ」
「だ、だって、先生が……」

キスって、言いましたよね?咄嗟に心の中でファイティングポーズをとると、先生の呆れた声が飛んできた。

「ソース、無くなったって言ったんだよ」
「え? あ、ソース!」

手元を見れば、空になったソースの容器が……。あーもう、バカバカ。意識しすぎだ。

「じゃあ私、すぐそこのコンビニで買ってきます」

こんな自分が情けなくて恥ずかしくて、目も合わせずドタバタと立ち上がる。

「俺も行く」
「いえ、近くなので一人で大丈夫です」
「いいから案内しろ。この前みたいなことがまたないともいえないだろ」

ぴしゃりと言われ、口を閉じる。それはつまり、心配してくれているということ? 

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