俺様ドクターの溺愛包囲網


「え? あいつって?」
「要だ。あいつはブランド物しか身に着けないし、食べる物も一流のものしか口にしない」

そこまで聞いて、ハッとした。そうだった。要先生とのこと……!

「あの、先生……」
「なんだ」
「私、この前、要先生と食事に行きました。告白もされました。でも……その」

たどだどしく告げる私を、キレの長い目がとらえる。そんな風に見つめられたら、うまく言葉が出てこなくなる。それでなくてもこんな話、し辛いのに。

「お……お付き合いはしないと思います。それと、日比谷先生は、日比谷先生です。お会計してきます」

カゴにデザートを適当に放り込むと、日比谷先生の視線を受けながら、私はレジへと駆けていった。

袋を握りしめ、二人でコンビニを出る。大通りは家路に向かう人で賑わっていて、その上には丸い月が静かに浮かんでいた。都会とはいいがたい町だが、不便なこともないし、自然もあって、なにより両親が育ったこの土地が私は好きだ。

ふと物思いにふけっていると、隣を歩く日比谷先生が口を開いた。

「お前は変わってるな」
「そうですか?」

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