俺様ドクターの溺愛包囲網


「要から告白されて断るやつなんていないだろ、普通。女は地位や名誉がある男が好きじゃないか」

確かにもう一人の秘書の谷さんもそういうタイプだし、今までいた子たちもそうだったと、日比谷先生に聞かされた。でも私はそういうもので、男の人の価値を測りたくない。

なんて偉そうなことを言ってみるも、誰かと付き合った経験もあまりない私に、大きな口を叩く権利なんてないんだけど。

「確かに要先生は素敵ですし、私も憧れていました」
「じゃあなぜ断る」

なぜかと言われても、どう答えていいかわからない。しかも先生は困り果てる私をなぜかじっと見ていて、気まずさから、冷たい汗がタラリと背中を伝う。

「あの、とにかく。私まだ要先生には返事をしてないので、内密でお願いします。直接お伝
えしたいので」
「そんなの、どうだっていいだろ」
「よくありません」
「相変わらず真面目だな」

先生がふっと笑うのが視界の端に入った。あ、また笑った。

「あいつとは、そんな話をする間柄じゃないから、心配するな」
「そうなんですね……」

兄弟でも様々。真宙は私に逐一恋愛のことも報告してくるのに。

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