俺様ドクターの溺愛包囲網
「いえ。そんな。鈴木さん自身が、頑張ってこられたからですよ」
元患者さんかな。こんな風に街中で声をかけられるなんて、よほど先生に感謝しているんだろう。しかも先生はどんな患者さんの名前も必ず覚えている。山本さんといい、鈴木さんといい。親身に向き合ってきた証拠だと思う。
「素敵なお嬢さんとお出かけ中に、突然声をかけてごめんなさいね。偶然会えたことが嬉しくて。では私はこれで」
「はい、失礼します」
女性は私にもぺこりと頭を下げると、足早に行ってしまった。
「元気そうでよかった」
鈴木さんを見送りながら、そんなことを自然と口ずさむ先生を見ていると、胸がきゅんと弾むのを感じた。口は悪いけど仕事熱心で、患者さん想いで。特殊な環境下で育ったのに、それをマイナスに捉えず、自分の足で立ち、今では感謝される立場にある。
いったい、どうしたらそんなに強くいられるの。どうやったら、こんな立派な人になれるのだろう。そんなことを考えているとふと、隣にぶらさがるその大きな手を握りたくなった。
先生。私、あなたを尊敬しています。
ーーあなたが好きです。