俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~


「今度はニヤニヤしちゃって。いったい今日はどうしちゃったんですか、宮永さん」

髪の毛先をつまみ眺めていると、谷さんが椅子を滑らせながら真横に迫ってきた。

「いつもクールで、真面目人間の宮永さんがぼんやりするなんて、もう理由は一つしかありませんね。恋でもしたんでしょ」
「こ、恋!?」

自分でもビックリするような上ずった声がでる。

「で、相手は誰です? うちのドクター?」

頬杖を突きながら、ずいっと私の顔を覗き込んでくる。どうして谷さんはこんなに鋭いんだ。会って数分で見破られてしまうとは。いや、私が単純すぎ……?

とはいえ、その相手が日比谷先生だなんて口が裂けても言えない。本人に知られる可能性だってあるし、なにより谷さんは日比谷先生と結婚したいと宣言していたわけだ。ここで私も、なんて言ったら、怒られるかもしれない。

「そういうのじゃないから。昨日ちょっと眠れなかったからぼんやりしてただけ。私が恋とか、ありえないって」
「ですね。女子力皆無の宮永さんには、無縁な話でした」

あっさり引き下がられ、がくっと力が抜けた。

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