俺様ドクターの溺愛包囲網
ということは、そう遠くない将来、二人のどちらかがここを継ぐことになるということか。争いごとになったりしないのだろうか。ましてや日比谷先生は養子なわけで……。
「宮永さん」
弾むような口調で誰かに呼ばれたと思ったら、今噂をしていた要先生が、いつの間にか医局に来ていた。
「要先生、おはようございます」
途端に心臓がドキドキし始める。要先生にはこの前の返事もしなきゃいけないし、隣には鋭い洞察力の持ち主が張り付いている。少しでも不審な行動をとれば、また易々と見破られそう。それに加え、少し離れた後方には日比谷先生……。
「おはよ」
そんな不安を抱える私とは裏腹に、笑顔で近づいてくる。隣からの視線が痛い。日比谷先生の反応も気になるが、視線を移すこともできず、要先生を見やる。
「ちょっといいかな?」
要先生が指差すのは、医局のドア。外に出られるかということだろう。
「あ、はい。会議が入っているので、少しでしたら」
「じゃあ5分だけ」
そう言って今入ってきたばかりのドアの方へと突き進む。なんだろう。また食事に行こうとか? そうだったらどうしよう。いや、この際だから、今ハッキリ断るべきだ。