俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~


谷さんの恨めしそうな視線を受けながら、二人で医局を出た。

「実はさ、知り合いから招待されてね」

差し出してきたのは、今人気の豪華客船のクルージングのパンフレット。こんな高価なものに招待されるなんて、さすが要先生。

「男一人で行くのはかっこつかないから、宮永さんが一緒に来てくれたら嬉しいなーと思って」
「あの……お気持ちは嬉しいんですが」
「ん?」

口ごもる私を要先生が優しい目で見つめる。そんな風に見られたら言いづらい。だって要先生は医師としても立派だし、優しいし、とてもいい人。傷つけてしまうんじゃないかと思うと、どんな言葉を選んだらいいかわからなくなる。

「料理も美味しいし、オーケストラの演奏もあって、すごく良いって聞いたよ」
「あの、すごく楽しそうですね」
「じゃあ、来月の5日、空けておいてくれる?」

要先生が嬉しそうに、声をあげる。そんな要先生を見ると、益々言えなくなる。第一、理由が思いつかない。日比谷先生のことを口にできるはずもなく……。

しかもなぜか急に頭がくらくらしてきた。足元が歪んで見える。


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