俺様外科医の溺愛包囲網~嫌われていたはずが甘く迫られています~
寝不足のせいかな、と頭を抱えていると、後ろから近づいてきた気配にハッとする。
「他のやつを探せ、要」
「颯士」
気が付けば日比谷先生が私の真横まで来ていて、要先生に冷たい声色で突っかかる。
「どうして颯士に、そんなこと言われないといけないんだよ」
なんだか不穏な空気が漂い始め、足元から冷えていく。こんなところで、しかも私のことで言い争うのは心地よいとは言えない。早く収めなきゃと焦りが募るも、言葉が出てこない。
「颯士も、宮永さんがお気に入りってことか」
「え?」
なにを言い出すの、要先生!?
「そういうことだろ? 颯士」
あたふたする私を無視して、要先生は続ける。
「答えてよ」
何も発さない日比谷先生が気になり、おそるおそる見上げれば、先生はいつもの険しい顔のまま口を結び引いている。
「お前が自分からほしいものを奪いに来るなんて珍しいな」
けれど、要先生のほうは穏やかな表情のままで、むしろどこか晴々しているような、ちょっと嬉しそうにも見えた。
「なんとか言えよ、じゃないと無理やり連行するよ?」
口では挑発しているのに、やっぱり嬉しそうな要先生。なんだろう、この違和感は。